ゲームな世界 No.3

                               小松 郁

第3章
 
 寮へは徒歩で10分ぐらいだった。
寮も学校と似たようなものでモノコックのただ平面的な建物だ。

 じゃあまた後で会おうね。

 バイバイしながら去って行く。
紀子さんは私を私らしき部屋まで案内してくれた後自分の部屋に戻っていったようだ。このラインより上のエリアが無料で表示されます。

何か全部立ち入れるスペースは手をかざせば良いだけらしい。

 部屋に入ると私は少し安心した。
個室で風呂らしきスペースもある。
ベットにクローゼットに机に小物入れのボックスに簡易的な冷蔵庫とビジネスホテルみたいだ。
照明は自動的に調光されるのか別に暗くない。

 取り敢えず私はクローゼットらしき物に歩み寄り何とか開けてみた。
うーん、制服のシャツが五枚程度とジャージと体操着、パジャマ、制服の冬物、Tシャツ類五枚程度、あとはコート一着とワンピースが二枚入っているだけだった。
 うーんと、下の引き出しを開ける。
やたら可愛い下着類がいっぱいとタイツのようなものソックスが何セットかあった。

 女にしては服は持ってないな。
まあ取り敢えず色々な装備があるのだろう。
でも良かった、今は余り選ばなくてすみそうだ。
私は制服を四苦八苦して脱ぎシャツもタイのリボンも外すとしわを伸しながらハンガー類にそれをかけて洗ってあるのかTシャツを引っ張り出し着てジャージをその上から着た。

 ふう落ち着いた。
ベッドらしき物に腰掛けながらどうしたものかと考える。
ご飯までは時間あるのかな?

 こういう時は学校の復習でもしているのだろうか?
ビールが飲みたくなったがそんな物は無いだろう。

おもむろに冷蔵庫に歩み寄りなんか開閉できそうなジュース類のパッケージがあったのでそれを取り出しちょっと飲んでみた。

 まあ野菜ジュースみたいなものか?
別に良いか。
少し飲んで戻した。

 さてバックの中の物を詳細に確認して行く。
 筆箱のような物にはごく僅かな筆記用具らしき物が入っていた。
何か文字を書く道具なのかどうやって書くのか解らない箸のような物も数本入ってる。
続いてポーチ類を開けるとまあ生理用品、ティッシュ類、ヘアピン、ヘアゴムらしき物が入っていた。
 来るのか?
まあ良い。
髪型のセットもどうやれば良いか?
また後で練習しよう。

続いて財布を開いて札やらを確認してみた。
1000と書いてあるやけにファンタスティックな紙が三枚入ってる。
これ円なのか?ドルとかじゃないよな?
でも参ったな。円ならどうにか調達する方法を考えなければ。
しかしこんなの出して偽札で捕まらないだろうか?
皆が使ってるか確認してから使おう。
あとは小銭がじゃらじゃら入ってる。

 さてクレジットカードもキャッシュカードもない。
少しげっそりした。
思い直し調べると公的な感じの保険証のようなものと学生証が入っているだけだった。
うんうんなになに2068年4月8日生?
元の世界と繋がっているのかな?
よくわからない。

 学生証には神崎沙紀とある。
写真付きだから間違いないだろう。
2084年度1期生とある。
今は何年だろう?

 と思い立ちさっきの手ひらをこすってみた。
うん2085年の表示がある。
まあ2年生かな?

 そしておそるおそるスクロール操作やらしてアイコンやらをざっと見てみた。
よくわからないのがほとんどだな。
取り敢えずBANKなりCASHなりCREDITなりMONEYなりPAYなりを探してみた。
うんなんかそれらしき物をタッチするとちゃんとまとまってるようだ。
ポイントの類いのアイコンも多い。

 その中の先頭にある銀行っぽいアイコンをクリックしてみた。
えっと残高と。
うんあった。なになに?
12345678、ん、1000万?
¥マークも付いている。

 おーナイス。
多少インフレに振れてても数百万ぐらいの価値はあるだろう。
使い方をちょっと調べなければ行けないがなんとかなるだろう。
まあ勘違いでも取り敢えず寮やら学校やらはある。

 しかしこの額はお父さんお母さんがいないと言っていたし遺産かな?
まあ合掌しとこう。
でも富の分配と回収の効率化はちゃんとやれてるのかな?

 まあいい。
 ご機嫌になったところで手のひらをこすりプロジェクションを消すと教科書の類いやらが全くないなと思いデスクに座りなおした。
 デスクには時計と本やノートやらモニター?やらキーボード?やらの表示がある。

取り敢えず時計に指をかざしてみると時計表示が浮かび上がった。
 PM5時38分か。
夕食は何時からかな?

 ちょっとしたら寮内を探索しつつ食事を待とう。
本のアイコンに指をちょっとかざしてみる。
うんなんか教科書の類いの目録が浮かび上がった。
適当に教科書に指をかざすと本のプロジェクションが浮かび上がった。

 スクロールしてみてちょっと眺める。
まあぱっと見で私が生きていた頃より昔のことは余り変わっていないようだが変わっていることもあるかもしれないので注意しなければいけない。
私が学生だった1990年代以降の事は随時追加されて言ってるみたいだ。

 まあよくわからないことも多い。
また勉強し直しか。
と呟くのであった。

 さて寮内を探索しにいこう。
とりあえずデスクで開いた項目をすべて指で消し私は財布を持って立ち上がった。

 部屋を出ると私は部屋番号の204を覚えて私は廊下をうろちょろした。
どうやらこのフロアは個室スペースらしい。
結構広いがドアの間隔で何となくそう思った。

 階段を下りてみるか。
下に行くとさっき部屋に上がるまでに見た玄関までのコースを確認しながら色々と部屋を見て回った。
 と開けたスペースに出る。
そこには女生徒達がいっぱいいる。

 顔もよくわからないので私はちょこんと一角に座った。
聞き耳を立てる。

皆は誰それってかっこいいよねーとか勉強ここよくわからないんだーとか運動今日良いタイムでたーとかはしゃいでる。

 誰それは芸能人の類いか?
それとも先生か?
まあ芸能人などを私たちが話題にしたらロリコンだのバカかお前だの大変だ。

 勉強の類いは皆が皆、様々なジャンルでここがダメと言っている。
スポーツの話題は何か専門用語が飛び交っているのでよくわからない。

といきなり後ろから抱きしめられた。
柔らかくていきなりで動揺してドキドキする。

 ねー一緒に話そう。

 は、はい、えっと誰でしたっけ?

 あー紀子から聞いたよ。なんか記憶喪失だって?
 それどんな感じ。
 私は由美でしょ。

 なんか変な感じです。
 あの食事ってここで良いんですよね。

 うんもうそろそろじゃない。
 でも部活ある子もいるから遅れても言えば出してくれるよ。

 そうですか。

 その変な感じって一度病院行った方が良くない?

 ええそうですね。
 またの機会に。

彼女は弁当箱を片手に持ってるようだ。

 あ、お弁当箱返却しなきゃ行けないですか?

 あーそうだね。
 私も返却してこよう。
 多分もう食事取れるよ。

 あっ私も弁当箱取ってきますね。

 良いよー。
 ここで待ってるねー。
 一緒に食べようー。

 はいじゃあまた後で。

私は急いで部屋に戻り弁当箱を取って戻ってきた。

 そこにはさっきの由美さんに紀子さんが加わっていた。

 あー戻ってきた。
 待ってたよー。
 じゃあ一緒に食事取りいこうか?

 はい。

私は弁当箱を由美さんに習って返却しながら食事を受け取った。

 やったー今日肉じゃん。

 なんかぺらぺらの合成肉っぽいが彼女たちは喜んでいる。

早速席に戻ると頂きますをしてちょぼちょぼと口に運びながら彼女たちの話に相づちを打っていた。
彼女たちはやけに熱心にケラケラ笑ったりしながら食事を食べていた。

 そして突然、私に向かってあとで購買で何か見てこうよーと言うのでそうですね。と答えた。
 
食事を食べ終えあれーみんな食べてる。私トマト苦手なんだよねーとかあっ私はチーズとか言ってる。

購買はなんか色々そろってるコンビニのようなものだ。
私は2人について回りながら色々見ていた。

私も何も買わないのも何なのでお菓子のようなパックを手にした。
まあほぼ数百円前後だ。
余り物価は変わってないらしい。

 2人と一緒に会計に行くと2人はレジのような物の側に手をかざして浮かびある金額を確認してOKを押しているようだ。
私も同じようにやってみて金額とOKとキャンセルが浮かび上がったのでOKを触ってみると支払い完了したようだ。

 2人と会計を済ませた後、私はじゃあねーと言いながら別れた。
部屋に戻ってくるとふうと息をつき少しベッドに横になっていた。

 ふうーお風呂に入ろう。
私は風呂に入り何とかコックの辺りを指で操作しお湯が出てるのを確認してえっとと思い古着入れを探した。
 古着入れは隅の方に折りたたまれていたので今日来ていたシャツを古着入れに入れてジャージをベッドの方に脱ぎながら下着類をメッシュの入れ物に入れてお風呂に入った。

 制服は洗うのかな?
でも1セットずつしかないからそれは無理そうだ。
まあ丁寧に着よう。
ふと思い立ち新しい下着とパジャマを取り出すとベッドの上に置いておいた。

 私は身体を一通りシャンプーやらトリートメントやらボディーシャンプーやら洗顔ソープやらをこれかな?これかな?と確認しながらまあそんなに多いわけでもないケア商品を手当たり次第に取っては備え付けられていた網で身体や髪をこすり一通り洗い流すとお風呂に浸かった。
ふう今日は疲れた。
ちょっと大股開きでグテーとしながらこんな格好大風呂だったらできるのだろうか?と思っていた。
まあ裸の女がうろついてるとこで取り敢えず風呂に入るのは落ち着かない。

 でも何かイベントがない限りこのままだろうか?
なんか長期戦覚悟か?
まあゆっくりしよう。

 しばらくしてお風呂を上がると髪が無茶苦茶になってしまった。
ドライヤーの類いを探り当て慎重に元の状態に復元しようとする。
またきちんと元通りにするには明日の朝で良いか。
私はひとしきり髪が乾いてちゃんと髪を後ろに流れるようにするとバスタオルで身体を拭いて外に出た。
バスタオルやタオル類は5セットぐらいづつある。
取り敢えず折を見て洗濯しなきゃな。

私は拭き終えたバスタオルをさっきの古着入れに入れると下着とパジャマを羽織り慎重に脱いだジャージをクローゼットに仕舞うとまたさっきの飲みかけのジュースを手に取りしばらくじっとしていた。

 明日からは授業に出なきゃな。
そう思い立ちまたデスクに座り教科書を開く。
色々と予習をするため詳細に見ていく。
ああ私の時代の活躍してた人間がいっぱい教科書に載ってるな。
コントやらももう伝統芸能になっている。
いろいろ思う所は沢山ある。

 ふと歴史に目を通していると情報世界大戦という見慣れない記述がある。
ふうまた戦争が起こったか。
どうやらこの世界はそこからの復興期らしい。

 私が生まれた時代も第二次世界大戦からの復興期だったな。
それをよく自覚したのは三〇代になってからか四〇代になってからか?

 書かれていることを見るとやはり切ないものだ。
核爆弾の誤発射、メルトダウン、大規模ブラックアウトなどなどありとあらゆる災厄だ。
どうやら旧大都市圏の隔離都市でそれぞれ再建を目指しているらしい。
地方は未だに孤立しているか。

 ふうこの時代は女の身体でも大丈夫だろうか。
職業選択の自由はあるが有無を言わさずウリなどをやらされる可能性はある。
結婚も女の身では大変そうだ。

 いつの時代も変わらないのか変わっているのか?
まあそれはおいおいと調査していこう。
幸いにして今は危害を加えられる恐れはなさそうだ。
勉強もちゃんとしていると言うことは平和な時代なんだろう。

 ふと時計を見た。
夢中になってたらもう夜中の0時近い。

 照明はどうやって落とすのかなと玄関やベッドサイドなどを探していると明かりのようなアイコンが両方に浮かび上がってって私は玄関のアイコンで照明を落とした後慎重にベットサイドに戻りベットサイドの照明を点灯させる。

 そして手のひらをこすりプロジェクションを浮かび上がらせると音楽の類いを探していく。
なんか音符マークのアイコンで選択して適当に音楽を流した。

 うん新しいのは全く分からない。
まあクラシック類から私の当時の音楽も探せばある。
適当に音楽を選択すると耳元で音楽が流れている。
プロジェクションを消しても大丈夫かなと思い手のひらをこする。
どうやら耳元で流れ続けている。

 私はしばらく音楽に耳を傾けている内に眠りにつくのだった。

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