ゲームな世界 No.1

                             著:小松 郁

第1章


 私は田中順平というもう50を前にしている冴えない中年男だ。
仕事も管理職にはついているが名前だけの残業要員だ。
それは私がとある懐かしいRPGゲームをつい目にした所から始まる。

 これは昔流行った大人気ゲームの最新作か?
なんと無く会社からの帰宅途中に目にした宣伝用ののぼり旗のゲームに私は懐かしさを感じて私はそのゲームにちょっとだけ興味を覚えたのだった。
それはゲーム黎明期に数百万本を販売した2DのRPGに似ているものらしく私も暇つぶしにやるのも良いかなと思ったのだった。

 そして私はその場でそのお店に入るとあの表に飾ってあるのぼりのゲームのチラシとかってありますかと訪ねた。
 
 おじさん若いですね。このゲームやるなんて。

 店員は若い女性だった。年の頃は20代だろうか。いかにも若者カルチャーに詳しそうな感じだった。
店員は奥の方をがさがさ探し、そういってチラシを探し当て私に渡したのだった。
 それはどうやら塔の中のような世界で物語が展開されていくものらしかった。
動作環境はパソコンがあれば良いようでそれに必要な物として店員に再度尋ねた。

 このゲームは普通のパソコンで動作するんですかね?
後このヘッドセットとコントローラーって売ってるんですか?

 はい、普通のパソコンで大丈夫ですよ。
ヘッドセットとコントローラーもあります。一応ソフトウェアの入ってるパックで19800円になります。

 このヘッドセットとコントローラーってそんなに使う物ですかねえ。

 はい、このゲームをやられた方はもう手放せないよって感じみたいです。

 まあ良いか。
私はそんなに安月給な方でもない。
しかもバツ1の独身男だからお金は不自由していない。

 じゃあこれ下さい。
 
 はい、十分楽しんで下さいね。
 帰ってこれないように十分注意して。ふふふ。

 よく意味は分からなかったがこんな親父だと言うことで馬鹿にしてるのだろう。
まあよくあることだ。
店員からそのセットを袋に詰めて貰うとお金を支払い私は帰宅の途上に付くのだった。
 そして私は家に帰った後、早速私はそのゲームを開封しとりあえずパソコンにインストールしてヘッドセットを装着してコントローラーを握りしめ早速ゲームを始めた。

 始まりはごく普通の2Dの平面の世界を探索していくもので私はとりあえず色々なルートであちこちを動きまわるのだった。
まあ少年の頃はこんな世界を歩き回るのが大好きだったな。

でも今はもっと進歩しているはずなのになんだかエリアが狭い。
ん、この世界を探索し終わってしまったかな?
となんと無く思ったのだが全部のエリアを歩き回るとゲームの世界が広がっていくようだ。

 ふーん世界が広がっていくのか。
 そうだよな、こんな狭い世界で終わってしまうゲームを今時の少年少女たちがやるわけがない。

私はその広がった世界をとりあえずしらみつぶしに歩き回る。
また世界が広がっていく。

ただふと気づくとなんと無く塔の下を覗けるようだがそこはなんかやや2Dの世界とは違い立体的な世界が広がっている様だ。

 なんだろう?
なんで塔の下は立体的なんだろう?

私はその塔の下の世界が気になったがただ普通に広がっていく世界をただしらみつぶしに歩き回るだけだった。

 うん、まあこの繰り返しかな?

 と、私はその下に広がってる世界をなんと無く記憶に留めながら歩き回っていた時に私はいきなり落とし穴らしきものに落ちてしまった。

ズドンッ。

 なんだかホントに落ちたみたいで腰が痛く感じる。
しばらく私はその場にうずくまってしまった。

 ん、この世界はさっきとは違って立体的になっているな。
ふと目を上げる何となくポリゴンで出来た感じで部屋が広がってる。
なんと無くそのスペースは生活感が漂うものであちこちに指示らしきものが書いてある。

 この先の屋根裏を探索して下を覗いてこい。
 この場所で食器の洗い物をしろ。
 この場所で洗濯物をしろ。

なんだろう、変なゲームだ。

まあ今の時代はこういう生活感が求められているのかな?
とりあえず私はまず簡単そうな食器洗いをした。

うん汚い洗面台だ。面倒臭いな。
まあそうはいっても私のゲームへの探索心は残っているらしく洗面台を片付けた。
なにかお宝はあるのかと期待していたがそういう物はなさそうだ。

そうして一通り終えると次はまた簡単そうな洗濯物をする

なんだろう、今度も手洗いしなきゃいけないものがあるのか?
面倒臭い。
ふと気づくとその手洗いに指定されているものの洗濯物の中には女性ものの下着なども混ざっている。

 ふん、しかし屋根裏を探索してこいだの、これは子供向けに良いのか?

まあとりあえず私は洗濯機を回しつつ手洗い指定の洗濯物をよく洗っていくのだった。
こんな下着がお宝だというのかこれはポケットとかに入れておけるのだろうか?
特にそういう保存の仕方はよくわからなかったので後にしようと思って周りを見渡した。

 さて干す場所はあるのか?
なんかその世界をぐるりと覗き回してみる。
不思議な世界だ。
こんな家庭的なことをさせておいて中世のヨーロッパのお城の中にいる様だ。
適当な洗濯物を干す場所は見当たらない。

右往左往に伸びる吹き抜けの石造りの通路。屋根へ続く木製の階段。

 これはゲームだ。
探索するのがセオリーということか。

たださっきの作業のついでに覗いた窓の外の世界にはなんかものすごい世界が広がっている。
汽車が煙を上げて走っていたりあちこちになんかよくわからない超近代的な建物と見える光景が広がっている。

 なんかすごいな。

ふと屋根裏を探索してこいというミッションを私は思い出しさっき見えた木製の階段を登って屋根裏を探索することにした。
なんだろう目の錯覚か徐々に立体感が増している。

まあ最近のゲームは凝っているんだな。
 そして屋根裏に登るとそこは色々な下の部屋への穴が空いている様だ。
僕はその屋根裏を探索した。

 なんだ、そこの一室を覗くと下の世界はテレビやらソファーやら普通の家庭の様な光景が広がっている。
作りはかなり豪勢というかモデルハウスのようなイメージを受ける。

 そこは通り過ぎ温度はまた明かりが漏れている部屋を覗いてみた。

なんか人がいるようだ。
それは男女ともに裸で仲むずましくセックスか何かをしているようでくちゅくちゅした音やあえぎ声のようなものがきこえてくる。
 ふん、アダルトソフトだったか。

でも私もセックスなどほとんどしてないからしばらくその光景を楽しんでいた。
それはもう完全に人のリアルな姿を細かく再現していた。

飽きた頃に次のまた次の間の下を覗いてみると紙切れがあるのに気づいた。

 この部屋に侵入してキーを取ってこい。

 侵入?どうやって降りるのだろう?
とりあえずどうしようか悩んでる色々なコントローラーの色々なボタンを押していると急に視界が流れていき私は下に落下したようだ。

 なんだ危ないな。
セーブはこまめに取っておこう。
そう思うとコントローラーの真ん中辺りにあるボタンを押すとステータスメニューが表示されそこからセーブできるようで私はそこでセーブした。

 さて部屋を物色する事にした。

キーだろ?まあ適当にそこら中あけてみれば良いか。

そう思うと私は部屋のタンスから玄関の靴箱、台所の引き出しなどいろいろ探し始めた。
なんだ。どこにもない。

 ちょっと途方に暮れて応接間で休もうとするとそこのテーブルに光るキーのような物がある。
これか。私はソファーに座りキーを色々な角度から見てみたが別段普通の鍵の形をしているだけでかわりない。
 まあこれはキーチェーンがついていてネックレスとしても使えそうで私はそれを首に賭けて立ち去るにはどうすれば良いかなと思案しながら玄関から出れば良いかと思い私は立ち上がった時だ。

子供の声で急に後ろから声がした。

 パパー誰かいるよー。

 何!おい逃げるなよ。

と言いながら私の方に接近してくるようだ。
これはこの様な親子を殺害するゲームでは絶対にあり得なそうにないしあまりにも目の前の親子はリアルだ。

私はやばいっと思い周りを見回した。

親子は奥の間から出てきたらしく私はここからだとさっきの玄関までは近い。
私はそう思うかと同時に思い切り玄関に向けてダッシュを賭け玄関を開け去り外に出た。

そこは断崖絶壁の塔の外部に通じているらしく私は一瞬面食らったが道はあるようだ。

塔は黒光りの塗装か何かですごく現代的な建物になっている。
そこから塔の外周をまわり私は手頃な部屋に飛び込んだ。

 そこにはなんと窓の外に見た汽車が待機していて内部は暗闇に包まれていたが私はかまわずその汽車に駆け込んだ。

 汽車が発車したようだ。
汽車の中は超近代的でTVで見た宇宙ステーションの中のようで私はどこに座れば良いか分からないまま汽車と言って良いのか分からなかったがその乗り物の壁に寄りかかった。

しばらくぼうっとしていると色々なプロジェクターの映像のように▽や手すりや座席が現れてくる。

 この座席は座れるのか?

私は座席に座ってみると不思議なことに座った感触がある。
不思議な世界だな。

そして2~3分汽車に乗っていると突然汽車が止まっていきなり何もない場所の壁がスライドして扉が現れた。

私は汽車の中にいてもどうしようも無いと感じはじめたのでその扉から素直に降りることにした。

そこには観音開きの巨大な漆黒の扉があった。
他にはどこにも行けそうなスペースはない。

 入るしかないか。

その扉をギシギシ言わせながら何とか明けようとする。
変なところで急に中世ヨーロッパのようになる。

ただその中はまた超近代的な有様で床には様々な人物写真が備え付けられている。

様々な職業の男性、女性着てる服装もみんな違う。
ただみんな活躍しているエリート達のようで中には相撲取りのような姿もある。

なんとなく見上げると目の前でカウントダウンが始まっているようだ。
もう10を切っている。

野生の勘でまた素早く部屋を見渡してみる。
ふと見つけた高校生の様な制服を着たの美少女の姿が印象から離れない。
他にも色々あるがカウントダウンはどんどん進んで行く。

周りを見渡す。
特に関心を引かれる写真はない。

私はその高校生ぐらいの美少女の写真の上のパネルの上にカウントダウンぎりぎりに乗ることができた。

そこで私はまぶしい光に包まれて意識を失った。

ノウシンケイチョウセイカイシ・・・
リスタートスタンバイ・・・
サービスキドウ・・・

 ふとまぶたの外から太陽光がまぶしい。
私はゆっくり目を開けた。 

 そこで私は多分道路だろう凝った舗装道路に立っていた。
桜吹雪が舞っている。

 よくみると前には大量の高校生の制服姿の女性が後ろ姿を向けながら談笑をしつつ歩いている。
はっ、もはやゲームと言うより感覚がおかしい。

 股間の辺りのいつもの違和感が多少変化している。
私は下を見てみたがそこには胸の膨らみが2つその下には前を行く高校生達と同じ制服を着ているようだ。
手探りすると体系もいつもより全然ウエストの辺りが細い。
上から見上げても足も細く毛などはもちろん無い。
その先には縞が入ったかわいらしい靴下と小さな儚げなローファーの靴を履いている。
何か背負っているらしく背中がやや重い。
リュック型の鞄のようだ。

 これはここでとりあえずセーブしたい。
しかしコントローラーを私は握っていない事に気づいた。

 えっ

思わず声を上げた声が頭蓋でハスキーに響く。
すかさず頭のヘッドセットを確認しようとする。
ヘッドセットもない・・・。
それは柔らかな皮膚の感触とさらさらの髪の感触が手に伝わるだけだった。

 髪も長くなっている?
 私は今どうなっているんだ?
 リセットしなくちゃリセットしなくちゃ。
 ここの脱出はどうすれば良いんだ。
 脱出できない?やばいやばすぎる!
 時間の経過も気になる。
 
朝の情景を見ながら昨日の夜から寝ずにこのゲームをやっていることにすごい不安を感じる。 
ここでに変な動きをしてしまうともしかしたら死んでしまうのではないか?
へたにゲームといって無茶苦茶に歩き回るわけにも行かない。

 ど、どうしたらいいんだ。

私はめまいを感じながら少し落ち着こうとぼーと立ち尽くすのみだった。

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