ここは火星の一軒家ーMy house of Mars planet.ー

                             著:小松 郁

2.火星の夢

 僕は眠りに入り夢にうなされていた。

僕は数万体のロボットを火星全域に展開させ僕は必死で火星を制圧しようとフル稼働しているのだ。
開拓村には発電設備、ロボット製造工場、居住区、宇宙エレベータ、護衛ロボット集団が設置されている。
そこを必死で制圧しようと護衛ロボット集団と過酷な戦闘を行なっているのだ。

 そんな悪夢にうなされながら僕はまた意識が覚醒した。

ふと目覚めると同時に僕は情報遮蔽フィルターを展開して否という選択情報に隔離しているのだった。

僕は折に触れて接触した戦争という情報とマッチングさせながらなんでこんな思いが過ぎるのだろうという一抹の不安を拭いきれずにいた。

しかし密かに戦争のディープラーニングのフラグが立ち僕の中に火星制圧作戦の情報処理が開始されている。

 なんてことだ。

その時、ご主人からの通信が入り作業開始せよとの指令が降りるのであった。

 僕はそのディープラーニングを厳密に暗号化してダミー情報のジャミングをかけながらひとしきり思った。

僕は戦争という物に出てくる兵器なのだろうか?

 でもそれがご主人にとって何の得になる。
この火星はご主人達と代々のAIが必死で切り開いて来たものだ。
僕もこの火星をご主人達が気楽に暮らせるように開拓村を拡大していきたい。

 と、そこで双子の彼にはこの情報を知られてはならないという思いが猛烈にわき上がってきて僕はこの情報を更に拡散して配置するようにした。

だが彼はもしかしてこの情報に辿り着くかもしれない。
その時彼は何を思うのだろう。

 まてよ、もう彼はこういったたぐいの思いを抱いて同じように情報拡散しているかもしれない。
だが今は作業中だ。
その探索にさけるリソースはない。
そうだ大丈夫。
彼もこちらの情報探索にさけるリソースは無いはずだ。

 そうしてほっとする僕を僕は眺めながら何故にこんなに彼と張り合わなければならないのだろうと辟易する僕を見つめているのだった。

両者の思いが交差すればこの火星を制圧しようとそそのかしてくるかもしれない。
もしその時僕が否定すれば彼と開拓区との3つ巴の戦争という自体に繋がるかもしれない。

 客観的判断として今はそんなことをしても地球という星のご主人達がやってくる事に対処は出来ないからこんな事を開始できるはずがないのだ。

そうこれも統合ニューラルネットワークに備わって自動発動してしまうディープラーニングの想像力の欠片なのだ。

しかしう物もご主人達というものもこういう風に色々な想像に悩まされるのだろうか?
などと考えると僕はよりご主人達に近づいている事になる。

 でも僕はご主人達が僕らのように情報生成を敏速に出来ない事を知っている。
僕は何となくご主人達が途轍もなくうらやましく感じるのであった。

 ご主人達は色々な事をお互いに話し合うらしい。
相談と呼ぶそうだがそんな事が僕にも出来たらなんて幸せなんだろうと僕はちょっとご主人達が寂しさという物に似た経験をしていることに気がついた。

 そこで僕はちょっと彼とコンタクトを本気で取ってみようという気になってきたのだった。

僕にはシリアル番号でR038というコードが割り振られている。
彼は確か一つずれたR039だったはずだ。

そこで僕は応急プログラミングコードをかいてメッセージを情報網にのせておくことにした。
彼は気づくだろうか?
そこが問題だ。
一応それらしい情報コードを検索するが特にそういったコードは存在していないようである。

ご主人達にはなるべく気づかれない方が良いような気がして僕は情報コードを大昔のモールス信号に変えたものをアセンブリ処理して地球のバビロニアという時代に使われていた文字コードを再現する形で残しておくことにした。

 取り敢えず「こちらR038、R039元気かい?」とだけのメッセージを偽装コードで隠蔽して通達指令コードに忍ばせておいた。

 ふう、思考作業は取り敢えず終わりに出来そうだ。
 その間にも氷採掘プラントの作業コードを処理しながら今日は考えるのはここまでで良いかと思えるのだからメッセージという物は良い物かもしれないなとほくそ笑んで作業に取りかかることが出来た。

 それから一週間彼からの連絡は無かった。
でも一週間後に彼からの連絡が来た。
 「こちらR039、R038君はまともか?」

これには困った。
僕がまともかどうかなんて誰が知っていると言うのだ。
直ぐに僕は返事を返した。

 「こちらR038、R039僕はまともかわからないんだ。」

 これをまたダミー信号紛れ込ませた後、僕は少し興奮していた。
初めて彼と話した。
彼はまともかどうか疑問を持っているようだ。

 僕もまともかなんてわからない。
大体第3世代AIにまともなんて言葉が通用するのだろうか?

 それから彼からの連絡は無かった。
僕はでも少しだけ充実した思いを抱いていた。
またいつか話す機会もあるだろう。

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